【萌えおすすめ】バイト先の可愛い高校生とのエッチ体験談➂

体験談

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バイト先の可愛い女子高生と【第七章】

彼女との関係が僅かに進展したかに思われたが、それから数週間、彼女が家に来る事はなかった。

相変わらずお互い忙しく、俺の方は後期の授業が始まっていたし、

どちらも一時期、風邪をひいていたりして体調を崩していたのも関係ある。

それが、十一月の中旬から劇的に変化した。

きっかけは、バイト後の雑談の中から。

彼女は文系脳で、得意度合いを図にすると、英>国>>>>>>>>>数>>理>>>>>>>>>>>>社という感じ。

とにかく、社会関係が苦手らしい。

歴史、地理、……その他。

私大だけなら、どれかを切り捨てればいいが、国公立も視野に入れている彼女は、まだ何かを捨てるのを決める段階ではなかった。

そのせいで、何とかならないかと苦闘していたらしい。

俺は逆に、歴史なんかが得意な方だから偉そうにも「こうすればいいんじゃない?」ってアドバイスした。

と言っても、結局、暗記教科だから的確な助言なんてない。

最終的には、個人の記憶に頼る部分が大きいからだ。

ただ、暗記の仕方にも、これとこれを関連付けて覚えれば記憶しやすい、というのはある。

それを教えただけ。

最初に、それを話したのが、ちょうど世界史の小テストがある前々日で、彼女はそれを参考にして追い込みをしたようだ。

結果、予想以上に理解が増して、応用力が付いた気がする、と彼女は言った。

そんな経緯で、バイト終わりに家に来て、勉強をするようになった。

と言っても、帰りが遅くなるのはまずいから、時間は、三十分から長くても一時間程度だ。

俺が暗記の手助けになりそうな情報を簡潔に説明して、彼女は、それをメモして帰って自分が覚える足しにする、というのが毎回の流れだった。

その頃には、寒さのせいで、バイト終わりに外で話をする機会は減っていた。

ほとんどの人が適当に挨拶して帰ってしまう。

当然と言えば当然か。

俺も同じように早く帰宅していた。

彼女との勉強会は、寒い屋外にいなくていいし、俺から見たら、彼女と雑談する時間が勉強する時間に変わっただけなので、特に不満な点はなかった。

ただ、心配事が一つ。

当初、俺は自分のアドバイスがもたらす効果について懐疑的であった。

俺の話が、却って彼女に悪影響になってしまってもいけないし、短時間で劇的な効果が上がるのだろうか、などと思っていた。

だけど、何度か彼女が「わかりやすい」と言っているのだから、次第に、教えられるだけやってみようか、という気になった。

結局は、彼女の押しに負けているだけなのかもしれない。

お互い様々な制約があるので、勉強会はバイト後のみ。

週二回か三回が限度だった。

それでも、意義のある時間だった、と後で彼女は言った。

そして、師走の二週目。

その頃は、主に期末テストに向けての対策が中心だったが、その日で年内の勉強は終わりにしようという事になっていた。

彼女には他にも試験科目があるし、俺にも課題があった。

年内は、それぞれに集中して、また年明けから再開しよう、と以前から話し合っていた。

そして、その日も無事に終わりかな、という時。

「なんか、欲しい物とかない?」

彼女がカップを片手に唐突に言った。

二人で俺の淹れたお茶を飲んでいる。

「欲しい物って?」

「だ・か・らー、欲しい物よ。……何かない?」

「え?どういう事?」

彼女が言うには、これだけお世話になったんだから何かプレゼントでも……という事らしい。

俺は、そんなつもりでやっているんじゃないから、と丁寧に断った。

「でもさー、私たぶん、今回、相当自信あるよ。中間より十点は上がると思う」

「それは、すごいね」

「一学期は社会「7」だったのね。あ、十段階だよ。……で、中間が良くなかったけど、期末で取り返せば、二学期「9」はいくと思うんだよね。まぁ、そこまでは言い過ぎかもしれないけど、最悪「8」は堅いかなー。それくらい自信がある。……てゆーか試験が楽しみ!」

「よかったじゃない」

「でしょう?だからこの気持ちを形に表わしたいのよ。苦しんでいた私を救ってくれたんだから。……で、何かないの?」

急にそう言われても思い付かない。

そう考えていたら、頭の中で「プレゼント」というキーワードから

「お礼」という言葉が連想されて、以前の事を思い出してしまった。

その話を彼女にしたら、「あったねー、そんなの」って笑い出した。

「俺さん、あの時かなりエッチな顔してたよ」

「どんな顔だよ!」

「こう……やってやるぜ!……みたいな」

「そんな事ないよ」

「そうだよー」

真意を見抜かれていた俺は照れ隠しに言った。

「じゃあ、今回そんな感じじゃ駄目かな?」

急に黙る彼女。

俺は地雷を踏んだ気がして、慌ててフォローしようと何か考えたけど、うまい言葉が浮かばない。

沈黙が続いた。

しばらく彼女は俯いていたが、やがて上目遣いに俺を見て、言った。

「……俺さんが、そんなんでいいなら……」

せわしなく動く彼女の指先が見える。

「…………私は別にいいよ」

「え……じゃあ……」

「再来週予定ある?」

俺の言葉を遮るように彼女は続けた。

反射的にカレンダーを思い浮かべた。

きっと、クリスマスの事を言っているのだろう。

「何もないよ」

「じゃあ……その時でいい?」

悪いわけがない。

でも、気になって確かめるように訊いた。

「えっと…それって……最後まで……って事?」

彼女は恥ずかしそうに頷いたと思うと、

不意に吹き出すようにして笑い出した。

どうしたのか訊ねると、笑いをこらえながら言った。

「だってさー、……なんか膨らんでるよ?」

俺の股間を指差す彼女。

気付くとマックスに近い勃起。

途中までの話の流れで、もしかしたら今日いけるのかも……と期待したせいだろう。

少し恥ずかしい。

それを説明して謝ると、笑いの治まった彼女は気の毒そうに言った。

「この前みたいので良ければ…………する?」

そんなありがたい提案を辞退するほど謙虚じゃない。

早速脱ごうとしたら、恥ずかしいから電気を消してくれ、と言われたので、その通りにして念の為カーテンも閉めた。

隙間から僅かに漏れてくる光だけで、ほとんど暗闇。

いつもの位置に座ると、彼女は自分から俺の正面に来た。

それからトランクスごと一気に脱いだ。

跳ねるように飛び出すチンコ。

座ると、そこにしゃがんで根元と袋に手を添えてくる。

そうして柔らかい刺激を与えてから舐め始めてきた。

まずは、玉から。

そして、根元、裏筋、カリ、亀頭と順番に上に上がってくる。

前に、俺が気持ちいいと言った所は重点的に攻めてきた。

覚えているのか、それとも反復的なものか。彼女に弱い所を攻められっぱなしの俺は堪らず、彼女の胸に手を伸ばした。

先月から彼女が家に来る時は、バイト帰りに限られていたので、彼女は制服姿だった。

冬服にコートという服装になっていたが、部屋に入れば、白のシャツとスカートだけになる。

そのシャツの上から揉み始めた。

「……んふっ……んふっ……」

すると、フェラしながら彼女の声音が変化するのだが、俺の行為を全く邪魔しない。

何事もなかったように舐め続けている。

さらに、俺は、彼女の行為を邪魔しないように抱き寄せて、背中に両手を回した。

彼女は、俺が何をするか気付いていない。

素早くブラのホックを外すと、前に手を回して彼女の胸を支えているものを押し上げた。

彼女は一瞬驚いて動きが止まったが既に遅く、俺の両手はシャツ越しにノーブラの胸をがっしりと捉えていた。

シャツの素材が薄いから直接触っているような気になる。

そのまま揉み回し、時々乳首をいじっていくと、さすがに耐え切れないのか聞いた事のない声を出した。

「……あっ…ぁふん…ふむっ……ちゅっ……はぁ……ぁぁん……」

「ぁあ……ぃゃん、んふっ…はぁぁ…んんっ……ぅぅん、…ぅふっ……」

声を上げる間隔も短くなってくる。

払い除けるような動作がないので、俺はシャツ越しに捉えた乳首を掴んだり擦ったりしながら彼女のフェラを堪能した。

彼女の手は、あくまで優しく撫でるように袋を刺激したり根元の方をしごいたりしながら、口では一転して舌を激しく動かして亀頭周辺を攻めてくる。

唾液が多く出ているのか、今までより音が大きい。

それらの刺激を感じながら射精の到来を知らせるように玉が縮みだす。

彼女は一度、口を離して、「もう出そう?」と訊いてきた。

「結構やばい」

俺が答えると、亀頭にチュッチュッッとキスしてから俺の方を見た。

暗かったからあまり良く見えなかったが、彼女は少し楽しんでいるように見えた。

それから、チロチロと舌先で尿道にたまった我慢汁を舐め取ると、

「……いつでも、どうぞ」

そう言って、またフェラを再開する。

俺の返事を聞いた彼女は、もう追い込みの体勢に入っていて、全体の刺激を強めながら首の上下動を激しくしてくる。

「……んっ……んっ……んふっ……」

という彼女の声にならない呼吸と、

……チュッ……プチュッ……チュッ……

という唾液を弾くような音が混ざって部屋に響く。

……んっ、んっ、……

……チュッ、チュッ……

……ぅふ……ぅんっ……

…チュ、チュッ……ジュッ…ブチュッ……

そうしながら彼女のフェラスピードは最高速になっていた。

俺は、もう我慢できなくなって、彼女のシャツのボタンを外して胸元を全開にさせた。

直接、彼女の弾力ある胸を揉む。人差し指と中指の間に乳首を挟みながら縦横に揉み回すと、「ぁあんっ……だめ…んっ……ぅぅん……」と喘ぐ彼女。

それでも口を離さずスピードを落とさないから、俺は、ついに限界を迎えて彼女の口に発射した。

「……あぁ……もういくよ……」

小刻みに頷きながら上下する彼女の口に、大量の精液が吐き出されていく。

ドビュッ、ドビュッ、ドビュッ……ビュッ……

容赦なく彼女の口に液体が注ぎ込まれる。

彼女の胸を鷲掴みにした手を震わせながら射精の快感が全身に走る。

震えているのは、チンコの下の玉と両手だけかと思ったら、下腹もヒクヒクしている。

それから、しばらく経って、最後の射精が終わり、彼女にそれを告げると、ゆっくりと唇を引き上げていく。

俺はティッシュを箱ごと渡して、精液を吐き出している彼女を見下ろす。

「ごめん、いっぱい出た」

素直に謝ると、彼女は無言で首を左右に振った。

平気だ、という意味だろうか。

反対に俺を気遣うように、「拭いてあげるよ」と言った。

ボックスティッシュは彼女の足元にある。

「……じゃあ、お願いします」

彼女の言葉に従って脱力すると、根元を支えた彼女は、再び唇を被せてきた。

「あうぅっ……」

ティッシュで拭かれるのだ、とばかり思っていた俺は、不意打ちに思わず声を上げてしまった。

チンコの先をペロペロ舐めてから裏筋を中心に舌を使ってくる。

最後にエラを一回りして、口を離すと、離れ際、先っぽにチュッとキスをしてティッシュを取り上げた。

「綺麗になったよ」

もうティッシュなんか使わなくても充分綺麗になっていたのだが、彼女は丁寧に拭いてから立ち上がって乱れた服を直しているようだった。

俺も、服を着てから部屋の照明をつける。久し振りの明るさに、なんだか照れ臭い。

普段なら、彼女は既に帰っている時間になっていたので、急いで片付けをして鞄を取り上げると彼女は帰っていった。

帰り際、玄関で靴を履いた彼女は、振り返って明るく言った。

「再来週まで待っててね」

そして、俯きながら消えるように出て行った。

俺は、彼女の言葉を何度も反芻しながら悶々とした夜を過ごした。

バイト先の可愛い女子高生と【第八章】

それから俺に訪れた嵐のような一ヶ月は強烈な思い出を残している。

彼女との最後の勉強会から三日後。

午後の講義が終わった大学で、父親が倒れた、という電話を受けた。

あまり好ましい状態じゃない、と言う。

一番早く乗れる新幹線の席を探して、そのまま田舎に向かった。

病院に駆けつけると、母親から大まかな経緯を聞いた。

それから面会時間ギリギリまで病院にいて実家に戻った。

父親は、その日から入院した。

それから二日かけて、今後の対応を話し合った。

実家には祖父母がいたが、話し合いは、俺と母親の一対一のようなものだった。

二日と言っても、一日目は父親の入院手続きや着替えや身の周りの物を用意するのに追われて、ほとんど時間がなかった。

その合間、大学とバイトに電話をかけて事情を説明した。

母親との話し合いの主な議題は、俺の進路だ。

最悪の場合、中退して就職をしなければいけなかった。

父親に、もしもの事があったら、

俺をあと二年や三年も大学に行かせる金銭的余裕は家にはなかった。

そして出た結論が、大学は一年間休学する、その間、俺は一度田舎に戻ってきて、その先については、父親の状態を考慮しながら後日話し合いをする、というものだった。

田舎に戻ってから五日後、俺は再び新幹線に乗って見慣れた町に戻って来た。

大学に休学届けを出し、バイトを辞める為に、店に顔を出した。

それから田舎に荷物を送った。

引越しは、ほとんど業者に任せた。

そのどれもが事前に連絡をしていたから流れるように片付いた。

用事が片付くと、その一日で田舎に引き返した。

ミホちゃんには一度だけ短いメールをした。

>落ち着いたら事情を話す。

大体そんな内容だった。

>時間が出来たら話を聞かせてね。

彼女からの返事も似たようなものだった。

店長に事情を説明しているから、大まかには知っているのかもしれない。

父親の手術は一ヵ月後に決まった。

その日まで毎日病院に足を運んだ。

年末は実家の掃除をして年越し蕎麦を食べた。

こんなに暗い年明けは初めてだった。

母親の白髪が増えたような気がした。

病院のベッドの横に小さな門松を置いて正月を祝った。

父親は口をゆがめて笑っていた。

その一週間後。

成功率五十パーセントを切っていた手術が無事終わった。

「日頃の行いがいいからな」

結果を知らされた父親が最初に言った言葉だ。

それから退院までの二ヶ月の間、病院を往復しながら実家で母親の手助けをした。

余裕が出来ると、地元で短期バイトを始めた。

なるべく短時間で済むようなものか、一日当たりの仕事時間が長くても週の出勤回数が少ないものを選んだ。

バイトを始めた頃だろうか。

携帯を失くした事に気付いた。

場所はわからない。

実家だろうか。

病院だろうか。

それともバイト先かもしれない。

何より、いつ失くしたのか見当も付かなかった。

田舎にいれば携帯を使う機会は、限られていたから、ずっと身に付けていたわけではない。

結局、携帯は見付からなかった。

紛失に気付いてから一週間後、新しい携帯を購入した。

電話帳データのバックアップはなかった。

アドレスも同じものを取得出来なかった。

それでも、当時の俺にとっては、それは、そんなに重要な事じゃなかった。=

父親が退院すると、安堵からか母親が寝込んだりした。

退院から一ヶ月経って両親が落ち着いてくると、改めて俺の進路について話し合いの場がもたれた。

父親は、大学に戻れ、と言い、母親も賛成した。

それで、来春から元の大学に通う事になった。

それまで田舎に留まり、バイトをしながら資格の勉強をしたりして、

大学と就職に備えればいい。

なにより退院していたが、父親は依然として予断を許さない状態で、

再手術という可能性を残していたから、俺が今すぐ田舎を離れるという意見は誰からも出なかった。

そして、夏が過ぎ、秋が過ぎて、再び年末が近付いてくると父親の体調も安定してきた。

術後の定期健診でも安定した数値が出るようになり、医者からも、母親を安心させるような言葉が出る機会が増えた。

その年の、実家で迎えた正月には去年いなかった父親がいた。

父親は嬉しそうに僅かながら日本酒を飲んだ。

来月には田舎を出る事が決まった。

二月の第二週。

春からの準備の為に新幹線に乗って懐かしい町に戻ってきた。

大学の手続き、アパート探し、引越し……

その他諸々の雑事を三日で済ませ、再び田舎に戻る予定だった。

以前に住んでいたアパートは既に入居者がいて、結局最寄り駅も変更せざるを得なかった。

レンタル屋にも挨拶に行こうとしたが、

彼女の事があって足が重かった。

しかし、あんな急に辞めて迷惑を掛け、その後、何の報告もしないわけにもいかないので、やむなく顔を見せた。

店長は俺を見ると喜んでくれた。

謝罪と、ここ一年の話をすると更に喜んでくれて、「親父さんが元気で良かったじゃないか」と言った。

戻って来ないか、と誘われたが断った。

店員は知らない人ばかりで、あまり付き合いのなかった顔見知りが一人だけいた。

彼女の姿はなかった。

知りたい欲求が湧いたが、店長に、名指しで彼女の近況は訊きづらかった。

遠回しな雑談から得た有益な情報としては、この一年で人の入れ替わりが激しかった、という事だけだった。

どちらにしても、今春高校卒業の彼女は、この店を辞めてしまう確率は高いだろう、と思われた。

店を出る時、店長は「また来いよ」と言ってくれた。

それっきり店には行っていない。

彼女と連絡を取るには時間が経ち過ぎている気がしたし、きっと彼女の方でも俺との事を過去の事として処理しているだろう。

「今更」という感覚が消えない。

彼女の事を粗末にしているつもりはなかったが、どの顔をして会いに行けばいいのか、という思いもあった。

もう別の男がいるかもしれない。

あれだけ可愛いのだから迫ってくる男もいるだろう。

その様子を想像すると胸が苦しくなった。

だからと言って、俺は自分の行動を後悔していない。

おかげで父親の存在を見詰め直す機会が出来た。

母親の泣く姿も見なくて済んだ。

彼女との事が、あれからうまくいく保証なんてないだろう。

もともと失恋していたのだから、

それを実感するのに時間がかかっただけだ。

そう、思った。

四月になって大学に通い始めた。

一年の後半まで単位を取っていたので、二年には進級できた。

知り合いは、一つ上の学年になっていたから、授業で見知った顔に会う事は少なかったが、単位を取る為に通っていたようなものだったので気にならなかった。

時々、駅で彼女の着ていた制服を目にする事があった。

きっと同じ学校の生徒なんだろう。

その度に、彼女のような気がして動揺した。

冷静に考えれば、彼女は、もう高校生ではないのだから制服なんて着ているはずはないんだけど、俺の中の彼女は、いつでも制服姿のままで、その格好で出会っても何の不思議もないような気がしていた。

もう、あの頃の彼女はいないのに。

心の中で、何度も忘れようと繰り返しているのに。

その制服を見ても反射的に彼女を思い出さなくなるまでには相当の時間がかかった。

こうやって、彼女の事も、いつかは綺麗に忘れていくのだろう。

映画を見た事も、勉強した事も、笑いあった事も。

みんな、そうして色んな人を忘れていくんだ。

大した事じゃない。

それまで俺は、何度あの明るい笑顔を思い出すのだろうか。

そんな事を思っていた。

バイト先の可愛い女子高生と【第九章】

今日が人生の分岐点だ。

誰にも二度や三度、そう感じる時があるだろう。

俺は、まさに今、それを感じていた。

高ぶる気持ちを抑えるように、落ち着けと自分に言い聞かせる。

同じ会社の同僚との待ち合わせで、駅ビル正面にある

彫刻かモニュメントか何だかわからない物の前に立っていた。

これから食事に誘い、その席でプロポーズをする計画だった。

同期入社した彼女には、何故か男の噂がなかった。

実際は俺が聞かないだけで、モテるのだろう。

あれだけの容姿なら当然だ。

しかし、入社から三年、同じ部署で彼女を秘かに見続けてきた

自分の判断からすると、現在彼氏はいないようだった。

仕事のせいもある。

お互い仕事に打ち込んでいた。

総合職の女性の割合は少なかったが、彼女は残業も休日出勤も男性と変わらずこなしていた。

彼氏がいない、という結論はそんな理由からでもある。

俺だって忙しくて彼女が出来ないからだ。

先輩社員のほとんどは職場結婚か、仕事関係の付き合いから発展して結婚に至っている。

自分も、その例に続きたいと思っていた。

彼女を初めて見た時、その美しさのあまり感動してしまった。

肩まで真っ直ぐに伸びた髪、理知的な瞳、整った鼻筋と口元。

こんなに自分の理想のタイプがいるのかと思った。

仕事で彼女と話す時は、どんな時よりも緊張している自分を感じた。

名前も良かった。

俺は二文字の名前が好きだったので、その点も好ましく思えて、

ますます彼女との出会いが運命的なものだと感じられてしまった。

しかし、そうすると、マキちゃんでもナオちゃんでも、全て運命の人になってしまうが、その点は考えずにいた。

俺のそういう想いを同期の友人に話すと、「言い過ぎだろう」と笑われた。

他にも「彼女の話をし出すと止まらない」とか「お前みたいに美化し過ぎるのも考えものだ」という意味の皮肉のような反論をされた。

客観的に見れば、『部署では一番かもしれないが、社内では一番ではない』というのが妥当な評価らしい。

しかし、俺にとっては、そんな事は重要ではない。

自分の理想とする人がいるのだから、何としても交際したいし、このプロポーズを成功させたい。

その思いが強過ぎて慎重になり、ここまで具体的な行動は起こせずにいたが、ようやく今日、前進出来そうだ。

その為の仕込みは万全だった。

さり気無く仕事を手伝い、一緒に残って残業をしたりした。

それが実って、部署では一番心を開いてくれるようになった。

もしかしたら社内で一番親しいのは俺かもしれないと思うまでになった。

だが、それでも彼女と仕事後に会うのは今日が初めてだった。

彼女は、忘年会などの会社絡みの飲み会には参加しても個人的なものには食事すら参加しなかった。

その為、今日も「少し相談があるから喫茶店で時間をもらえないか」と嘘をついて誘ったのだ。

実際には少し高目のレストランを予約してある。

今月は厳しくなってしまうが仕方ないだろう。

先月のボーナスだけが頼りだ。

そんな事を考えていたら彼女の姿が見えた。

今日も輝いている。

美しい。

溜息が出そうになった。

「お待たせ。どこにするの?」

「向こうに落ち着く店があるから、ちょっと歩こう」

そう言って連れ出す。

彼女は黙ってついて来る。

「ここ?」

店の前に立つと、彼女は俺に向かって言った。

「そう」

「喫茶店じゃなかったの?」

「そうだっけ?」

とぼけて誤魔化した。

受付で彼女に聞こえないように予約した旨と名前を告げた。

席に案内される。

壁際の奥の方にある二人掛けのテーブル席についた。

メニューを開いたけど、

前もって調べていたから頼む物は決まっていた。

洋食のコース料理。

店内は半分ほど埋まっていて、席の間は広いから話に集中出来る。

次々に運ばれてくる料理を消化しながら適当な話題で場を繋げ、デザートまで辿り着いた。

そこで、今日の目的を打ち明ける。

結婚を前提に交際したい、と告げた。

彼女は驚いていたが、デザートを食べ終わらないうちに断られた。

理由を訊くと、既に彼氏がいるらしい。

今度は逆に驚かされた。

会社の男だろうか。

それとも取引先の男か。

大学時代の男かもしれない。

そんな話は聞いた事がなかったので、つい問い詰めるように訊いてしまった。

彼女は、そのどれも否定した。

そうすると、さらにムキになってあれこれと質問を重ねた。

出会った場所やどんな男か、など。

考えてみれば、彼女とこんな話をしたのは初めてだった。

「普通の人」

俺の質問に、彼女は最初そう答えた。

普通の人と言っても、

彼女みたいな可愛い子の言う「普通」なんて当てにならない。

俺は、きっかけから訊ねていった。

それから、彼女の打ち明け話が続いた。

「私、高校の時から、なんとなくモテだしていたのね。中学の時は、そんなじゃなかったんだけど何故か高校くらいから色んな誘いが増えたの」

「へぇー」

さぞ可愛い高校生だったんだろう、と想像した。

「そういうのって、わかるじゃない。周りの目も変わるし。……それでさ、結構天狗になっていたんだと思うんだよね。今考えると、ひどいなって事もしてた気がする」

「それで?」

「その頃知り合った人なんだけど、その人も私に好きだって言ってくれたの。でも私、なんか
その気になれなくて、別に嫌いじゃないんだけど、断ったのね」

(まぁ、そういう時もあるだろう)

「でもさ、その人私がフッテるのに、その後も普通にしてくれてね。色々困った時とか助けてくれたんだよね」

彼女はカップを取り上げて、さっき運ばれて来た食後のコーヒーを飲む。

「それで、最初の内は、私も『私によく思われたくて、してるんだな』とか『気が変わるようにしているんだな』とか思ってたのよ」

「そういう意味もあるだろうね」

「でもね。それって一週間とか短い時間じゃなくて何ヶ月とか続いたの」

「そうなんだ」

感心したように言った。

「で、そうしていると、何かと話す時間とか一緒にいる時間が

増えてきて、私もなんとなく『付き合ってもいいかもなぁー』って思ってきたんだよね」

「で、付き合ったの?」

彼女は首を振った。

「付き合えなかったの」

「なんで?」

「やっぱり、私が一度断っているっていうのがあるから、ちゃんと付き合うなら、今度は私から言わなきゃいけないなって思っていたんだよね」

頷く俺。

「でも、その辺が私のずるかった所なんだけど、出来れば、もう一度彼の方から告ってくれないかなぁ……なんて思ってたのね。……それで、こう……彼が言ってくれないかな、なんて思いながら
そういう状況を作ろうとしてみたり、色々してたの」

彼女は、大まかにだが、当時の作戦の数々を話してくれた。聞いていると、二人きりになるようにしたり、会う機会を増やそうとした彼女の苦労がよくわかった。

「で、そんな風にしてたら、彼の方で、もう一度告白してくれるんじゃないかっていう雰囲気を感じるのね」

「で、言ってきたの?」

彼女は否定した。

「そうなると、私からは余計に何も言えずに待っちゃって。早く言ってくれないかなって感じでさ。でも、なかなか彼は言ってくれなくて……」

当時を思い返すみたいに少し上を向いた。

「そんな繰り返しで、時間だけ流れて……、私の方も、いい加減『もう言ってしまおう』という気持ちになってきて。それと比例するみたいに、彼の方でも、何か言おうとしてくれる感じがすごいするのね。で、『もうどっちでもいいや、この日に言おう!』って決めたの。それで結果的に彼の方が先になったら、それはそれだし、私が先になっても別に問題ないや、って思ってたんだけど……」

「だけど?」

「彼の方の都合で急に会えなくなっちゃったんだよね」

その経緯を簡単に説明した。

「しばらくしたら会えるんだろう、って思っていたんだけど、私の方でも受験があったり色々あって、それっきり会えなくなっちゃった。メールもしたんだけど、アドレス変わってたし……」

「好きな女でも出来たんじゃないの?」

意外にも彼女は同意した。

「そう。私もそう思って。でも何となく、その後どうなったのか知りたい気持ちがあって。大学入っても好きな人とか出来たんだけど、頭の隅にその人の事が残ってるのよね」

さらに彼女は続ける。

「それで……、大学卒業するくらいかな?買い物してたら偶然高校の時、同じバイトをしてた知り合いに会って、昔話をしていたら、その人、彼のアドレスを知ってるって言うのよ」

「驚きだね」

「私もビックリして『何で知ってるの?』って訊いたら、その知り合いも、たまたま彼とバッタリ会って交換したみたい。その人も、急に彼と連絡取れなくなっちゃっていたから気にはなってた
みたいで、『あれからどうしたの?』って感じで話が弾んで、また連絡取り合っているって言ってたの。男同士っていいわよねぇとか思った」

「で、連絡したんだ?」

苦笑しながら彼女は言う。

「なんか笑っちゃうくらい白々しく『そう言えば、彼に連絡したい事があったんだ』とか言ってアドレスを訊いたわ」

それからは、順調にいったようだ。

その彼は、彼女のメールに返信してきて長い間の音信不通を謝罪し、彼女の方は、それ以上の謝罪のメールを送った、と話した。

そして、二人の関係は昔以上に親しくなったらしい。

彼女は、二人が既に半同棲している事や、部長には、結婚をする事とどこで発表しようか考えている事、皆が揃う忘年会あたりに部長からお願い出来ないかと相談している事、などを話した。

最後に、「だから、しばらく皆には黙っていてほしい」と付け加えた。

「じゃあ仕事辞めちゃうのか?」

「わからない。彼は続けてもいいって言ってくれているし、部長も期待してくれているみたいだから……」

その時、僅かに低音と振動が聞こえた。

彼女は慌てて携帯を取り出すと画面を覗き込む。

「ごめん、……なんか彼が、これから会おうって言うんだけど……」

駅まで彼女を迎えに来るようだ。

俺達は会計をして店を出た。

半分出そうとする彼女の申し出を頑なに拒否した。

並んで歩きながら駅まで着くと、俺は、その男を一目見たい一心で彼女と話しながら、
一緒に彼が来るのを待っていた。

やがて俺の前に現れた彼は、

スーツを着た仕事帰りの平凡そうな男だった。

彼女の言う通りで、背は俺と同じくらい、

顔は俺も負けてないだろう、という気がした。

どんなカッコイイ男が来るのか、と身構えていた俺は拍子抜けした。

「彼女に相談に乗ってもらって……」と言い訳をすると嫌な顔一つせず、

逆に「こっちが困った時には、よろしく」と言ってきた。

彼は、彼女の事を呼び捨てにしていた。

彼女は、その横で照れたように笑っていた。

それから俺は、二言三言交わして二人と別れた。

二人は、会釈をして、俺とは反対方向に向かう。

少し歩くと、携帯を取り出して、同僚の番号を押した。

「あー、俺だけど……、駄目だったよ」

「そっかー。残念だったな。理由は何て?」

「いやー、よくわからんけど断られた」

「じゃあ、俺の出番かな」

「おいおい、俺が無理なのに、お前じゃもっと無理だろー!」

そんな軽いやりとりをして電話を切る。

最後に同僚は「元気出せ」と言った。

振り返ると、二人の姿はもう見えない。

(楽しそうだったな、彼女)

ふと思い返す。

今まで見た中でも一番の笑顔をしていた。

それは、ずっと彼女を見てきたから自信を持って言える。

きっと、彼といる事が幸せなんだろう。

相性がいいと言うのか。

お似合いと言うのか。

とにかく、僅かな時間で二人の絆みたいなものを感じた。

(これから、二人は、ずっと同じ道を歩いていくんだろうな)

不意に抑えきれない感情が湧いてきたけど、彼女の明るい未来を想像しながら改札を通り抜けて電車に乗った。

(終わり)

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